タバコがもたらす影響を知っていますか?
たばこと病気の関係
たばこはがんや呼吸器系の病気と深いかかわりがあることが知られており、全世界で年間500万人、日本でも11万人以上が喫煙関連の病気で死亡しています。
たばこの煙には70種類以上の発がん性物質をはじめ、5300種類以上の化学物質が含まれており、喫煙によってがんや循環器疾患、呼吸器疾患、糖尿病、歯周病などさまざまな生活習慣病のリスクとなります。
国立がん研究センターの予防研究グループが1990年から2010年にかけて、40~69歳の日本人男女9万6000人を対象に「喫煙、飲酒と口腔・咽頭がん罹患リスクとの関係」をテーマにした大規模な研究を行いました。
この研究によるとたばこを吸わないグループと比べて、たばこを吸うグループの 口腔・咽頭がんの発生リスクは2.4倍という結果がでています。部位別にみると下咽頭がんへの影響が特に大きく、たばこを吸うグループで約13倍、発がんリスクが増加しました。
たばこの煙に含まれる有害物質
たばこの煙には、喫煙者が吸う主流煙とたばこの先から出ている副流煙があります。たばこに含まれる有害物質は副流煙に多く含まれているとされており、代表的なものがニコチンやタール、一酸化炭素です。
ニコチン
たばこに含まれるニコチンは依存性を高める物質です。喫煙によってニコチン血中濃度が上昇することで依存が形成されます。個人差はありますが、麻薬に匹敵するほどです。喫煙後約5分でニコチン血中濃度が最大になり、約1~2時間で半分以下になるため、ニコチンが欲しくなりたばこを吸わないとイライラしてしまいます。
また、ニコチンは依存性を高めるだけではなく、脈拍を増やし血圧を上昇させる作用があり、心臓に大きな負担をかけてしまいます。
タール
たばこの煙のうち、一酸化炭素やガス状成分をのぞいた粒子状の成分のことで、フィルターに茶色く付着するヤニのようにべったりしたもので粒子相の総称です。
このタールにはニコチンをはじめとする有害物質や発がん性物質が数多く含まれていますが、他にも発がん性物質が約70種類も含まれています。
一酸化炭素
有機物質の不完全燃焼で発生するのが一酸化炭素で、たばこの煙に3%前後含まれていて、無味無臭の気体で極めて強い毒性の物質です。血液にヘモグロビンという成分があり、酸素と結びついて全身に運ばれていきます。
一酸化炭素は酸素に比べて200倍以上もヘモグロビンと結びつきやすい性質を持っており、喫煙によって一酸化炭素を吸い込むと、酸素とヘモグロビンが結びつくことができず、血中の酸素運搬能力が低下し酸素不足に陥ってしまいます。
自分の意思とは関係なく副流煙を吸い込んでしまうことを受動喫煙といいますが、たばこの有害物質は副流煙に多く含まれていると言われています。
加熱式たばこ・電気たばこは無害なのか
加熱式たばこは紙巻たばこよりも体に悪くないと考えている人が多いようです。ユーザーの中には加熱式たばこは水蒸気しか出ないから大丈夫といって、幼い子どもの横で吸っている人がいます。
たばこメーカーは加熱式たばこが、燃焼ではなく加熱で煙が出ず、蒸気なので主流煙の有害物質が低減され、副流煙を減少することで周辺環境の汚染も抑えられるとしています。
しかし、あくまで「低減」です。加熱式たばこのデータはたばこ産業によるもので中立的なデータの集積はまだ少ないのですが、ある報告ではニコチンは84%、一部の発がん性物質は7~8割しか減少しておらず、その他の有害物質も相当量含んでいると報告されています。
電気たばこは、たばこの葉を使用せずカートリッジ内の液体(リキッド)を電気加熱し、発生した蒸気を吸うものです。リキッドの主成分は食品添加物や医薬品などにも使われているものですが、国立保険医療科学院の調査によると、加熱され霧化する過程で、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒドといった発がん性物質を発生するものがあると報告されています。
加熱式たばこや電気たばこであっても、有害物質を発生させるという正しい理解が大切です。
たばこと腰痛
椎間板ヘルニアのある人の喫煙率は、非喫煙者に比べて高く、喫煙者は腰痛になりやすいということがわかっています。
背骨の骨と骨の間には、クッションの役割をする椎間板がありますが、椎間板には血管がなく、椎間板の周囲には毛細血管から染み出た栄養分を吸収しています。喫煙によって椎間板周囲の毛細血管を収縮させ、栄養が十分に行き渡らなくなり、椎間板を変性してしまうわけです。
栄養の行き渡らない状態が続くと、椎間板の水分が失われてしまい、スカスカとなってクッション性が薄くなり、骨同士がぶつかり神経を圧迫してしまいます。また、たばこは腰だけではなく首の椎間板にも影響を及ぼすことがわかっています。
腰に負担をかける仕事ですでに腰痛を持っているなら、早めに禁煙したほうがいいでしょう。
たばこと肥満
厚生労働省の統計資料によると、喫煙者の肥満は非喫煙者より多いという結果が出ています。喫煙数が多くなるほど男女ともに肥満が増加し、女性の場合男性の2倍以上の肥満が見られました。
喫煙は男性ホルモンを刺激し、女性ホルモンの働きを弱めるため、女性でも男性の様な内臓脂肪型肥満になるそうです。こうした内臓脂肪型肥満はがんや心臓の病気などの原因となり、同時に血液中の中性脂肪量が増加し、動脈硬化や脳梗塞といった生活習慣病を悪化させてしまいます。
このことから厚生労働省は痩せるために喫煙する、たばこを止めたら太るという説に根拠がなく、逆に喫煙者は健康意識が低く、過剰摂取、運動不足の影響で太っている人が多いとしています。
禁煙後の体重増加は、食べ過ぎや運動不足が原因です。禁煙中は食事量、アルコール、間食に気を付けましょう。体重増加が気になる場合、禁煙が落ち着いた3カ月後からダイエットを考えるといいでしょう。
た
ばことCOPD(慢性閉塞性肺疾患)
たばこを吸い続けると有害物質によって気道や気管支が炎症を起こし、肺を壊して慢性気管支炎や肺気腫を発症します。放置すると歩くだけで呼吸困難となり、さらに症状が進行すると寝たきりとなって呼吸不全や心不全で命を落とします。こうした病気をCOPD(慢性閉塞性肺疾患)といい、喫煙と関係が深い病気です。
喫煙によるストレス解消効果
喫煙者の多くがたばこを吸うとストレスが解消され、リラックスできるそうですが本当でしょうか?
実は思い違いで、血中のニコチン濃度が下がってくると、不快な気分を感じるようになって、落ち着きがなくなり、イライラした状態になってしまいます。これはニコチンの離脱症状です。
たばこを吸うことでニコチンが供給されると、イライラや不快感が解消されるため、たばこを吸うことでストレスが解消されると感じるのです。
離脱症状はたばこを吸えば治まりますが、時間が経てばまた同じ症状が起きます。解消するためにまたたばこを吸うとなりますが、実際はたばこを吸うことでストレスを作り出しているといえるでしょう。
禁煙のメリット
長年、喫煙していたとしても、禁煙するのに遅すぎることはありません。禁煙によって病気の有無を問わず健康改善効果が期待できるので、病気を持った方が禁煙することは大切なのです。
禁煙すると24時間で心臓発作のリスク低下が見られますが、その後、比較的早期に見られる健康改善には、せきやたんなど呼吸器症状やインフルエンザなどの呼吸器感染症にかかる危険が低下することがあげられます。
禁煙から1カ月たつとせきや喘息などの呼吸器症状が改善され、免疫機能が回復し、かぜやインフルエンザにかかりにくくなります。
さらに1年たつと肺機能が改善され、2~4年後には虚血性心疾患や脳梗塞のリスクが約1/3減少。肺がんのリスクを下げるには禁煙5年以降と時間がかかりますが、病気のリスクが禁煙から5~10年で非喫煙者と同じレベルまで近づくことがわかっています。
他にも禁煙することで、顔色や胃の調子がよくなり、目覚めもよくなるなど、日常においても禁煙の効果を実感できるでしょう。
自力で禁煙を成功させるコツ
最初はあまり力まず今日一日だけ禁煙しようという軽い気持ちで始めましょう。
健康のため、家族のためなど、なぜ禁煙したいのか理由をはっきりさせ、記録しておくことで、くじけそうになったとき踏みとどまることができます。禁煙開始日は仕事などのストレスが少ない時期を選びましょう。
吸いたくなったら、深呼吸や体を動かし、たばこ以外のことに目を向けるようにします。その他に冷たい水や氷、熱いお茶、シュガーレスガム、昆布、歯ブラシなどを使って気を紛らわすのも効果的です。
たばこをやめて辛いのは、禁断症状のピークがくる最初の3日間です。まずはここを乗り切ることが禁煙成功のカギといえます。
もし、失敗したとしても何度でも挑戦できます。失敗を次に生かして、またチャレンジしてみてください。
自力以外で禁煙を成功させるための方法
自力で禁煙することも可能ですが、専門家の支援を受けたり、禁煙補助薬を使用することで禁煙の成功率が高まります。
禁煙治療を行う
禁煙治療は病院で受診し、医師の処方した禁煙補助剤を使って禁煙します。医師からのサポートが受けられるため、自力で禁煙するよりも確実にたばこをやめることが可能です。
健康保険適用によってたばこ代と同じくらいの費用で禁煙できます。健康保険提要の条件は以下の通りです。
ニコチン依存症の判定テストが5点以上
1日の平均喫煙本数×これまでの喫煙年数が200以上(35歳未満はこの条件は必要なし)
禁煙をすぐにでも始めたいと思っている
禁煙治療を受けることに同意している
市販の禁煙補助剤を活用する
医師の処方を必要としない禁煙補助剤は薬局やドラッグストアで購入可能です。また、購入時に薬剤師の指導を受けられます。